CN遺伝子日記帳

技術的な問題への解決策を提案するふりとか同人誌の話とか

シーシャの白煙越しに覗く秋葉原

 血溜まりに沈んだ金曜日の労働の死体を背に、私は一路秋葉原へ向かった。アドレナリンが汗となり全身から吹き出して、下半身を伝い、やがてそれは足跡に変わる。誰かにつけられていないか? 一刻も早く、このまとわりつく不快感を鎮めなければ。そういうときは……あれだ、スパスパと煙を、シーシャを吸うんだ。退廃的なあの行為――チルとかいうやつだ。ちなみにこの語はエモと似たような雰囲気を感じてあまり好きではない。

 煙を吸うならメイドを眺めたい。誰がそう思ったか、秋葉原にはそういう店がある。私がメイド服にやたらとフェティシズムを覚えるのは、付き合いの長い連中には周知の事実だと思うが、しかし、あのキャピキャピと客引きをしながら、その後ろでいかついあんちゃんが目を光らせている、あの種のメイドを好んでいるわけではない。私が好きなのは、布の重そうなロングスカートにフリル。エプロンは純白ながらも日常業務の片鱗をうかがわせる「くすんだ」メイドだ。ついでに言えば私はキャラクター物のコスプレが嫌いなのだが……ああ、この話は長くなるし地雷原を突っ走るようなものなので止めておこう。

 とにかく、ロングメイドのいるシーシャ屋に行ったという話だ。店名はここには載せないが、まあ、ググれば出ます。店の入っているビルにはキャピったタイプのメイドカフェばかりで身構えてしまったが、えいやでエレベーターに乗り込み、扉を空けて入店。先客が怪しい器具を駆使しながら白煙を吐き出していた。店の装飾は微オシャレなカフェ風で敷居は低い。ロングメイドに促されて着座すると、システムの説明が始まった。平たく言うと、ドリンク+2時間くらい吸えるシーシャ・1フレーバーで4000円でお釣りがくる感じ。

 普段私は喫煙しないのだが、シーシャの吸い心地は悪くない。今回はチョコレートベースの甘めのフレーバー。深く吸い込んで煙を吐き出す。短い時間に吸いまくるとクラクラくるので、ゆっくりと間隔を置く。ノートPCを構えて紙・心・ペン・心本のプロットを練る。煙を吸う。練る。吸う。寝る……ことはなく、吸う。15分に一度ぐらいメイドの方が炭の交換に来てくれて、多少世間話をする。丸眼鏡の美人だった。良し。

 とまあ、こんな2時間を4000円弱で買ったわけだが、張り詰めた日常をほぐすには良い経験だった。おそらく再訪もすると思う……が、CP(コミュニケーションポイント)がそこそこ溜まってないとあのビルへ立ち入るのには躊躇してしまうだろう。どこで売っているのかCP。もしくは薄い本を書くと腹を決めてエレベーターのボタンを押すのもいいかもしれない。以上。別にオチとかないわよ。